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ガンツフェルト実験 (ganzfeld experiment)

1970年代に始まったガンツフェルト実験は、2010年を越えた現在でもいまだに、あるなし論争が続いている。ただし、論争が続いているからと言って、「超能力が実在する」という可能性を示唆しているわけではない。むしろ逆に、「ないものをあると言い張り続けている」と解釈したほうが現実に近い。

超能力肯定派がこの40年間なにをやっていたかというと、ガンツフェルト実験に否定的な結果が出るたびに、解析の範囲や方法を変えて、有意性が表れるようにするということをずっと繰り返しているだけである。つまり、超心理学は、「なにが原因で有意性が出るのか解明する」ような研究はせずに、「有意性が残る」ような実験ばかりを繰り返しているということ。これはきわめて不毛な行為である。

明治大学石川幹人教授のメタ超心理学研究室のサイト「3-2 ガンツフェルト実験」でこの実験の詳細を見ることができる。これを見るとわかることだが、ガンツフェルト実験はテレパシーの実験ではない。テレパシーだというのなら、それは心と心の通信であって、どれだけの情報量が送受信されたか示されなければならない。しかし、ガンツフェルトの受信者が言うことはきわめて曖昧で、それだけではほとんど意味をなさない。これは、「統計的有意性」はあるのに、意味のある通信はできないという奇妙な現象である。「○か×か」といった非常に単純で、誰が見ても結果がわかるような実験ではなく、必然的ではない複雑なプロセスを意図的に挿入した実験である。つまり、このような実験にはバイアスが入り込む余地があるということ。

統計的な有意性はあるが、その効果の大きさを定量的に直接計測できないということは、その有意性が見かけ上のものであることを強く示唆している。

実験方法

ガンツフェルトの実験方法は、メタ超心理学研究室の「3-2 ガンツフェルト実験」でその詳細を読むことができるが、ここでもその概要を列記しておく。パソコンを使って、これらの過程を自動化したものをオートガンツフェルト(自動ガンツフェルト、autoganzfeld)とも呼ぶ。

  • ガンツフェルトの実験参加者は、隔離された部屋にそれぞれ置かれた「送信者」と「受信者」からなる。
  • 受信者の感覚は遮断されていないといけない。そこで、ピンポン玉を半分にしたもので目を覆い、赤い光を浴びせて視野を均一化する。さらに耳にはヘッドフォンをつけて白色雑音が聞かせられる。
  • 実験を始める前に、受信者はリラクゼーション過程を経て精神的に落ち着いた状態にされる。
  • 送信者は、大量の画像やビデオクリップの中から無作為に選ばれたものを一つ見せられ、超常的な方法(テレパシー)によってそれを受信者に送ろうとする。
  • 受信者はこの情報を受け取って、その時感じたイメージや感覚を報告する。
  • 受信者はその後、4つの画像やビデオクリップを見せられる。そのうちの1つがターゲットであり、残りの3つは無作為に選ばれた無関係のものである。
  • 受信者は正解を選ばないといけないが、偶然で当たる確率は25%である。

この実験方法では、仮に超能力が実在したとして、それが作用するのはどの段階なのかよくわからない。本当にテレパシーとして情報を受け取っているのだろうか?それとも正解を当てる時に透視しているのか?

なお、ガンツフェルト実験では、単純な記号や文字列、数列を送受信することは出来ない。一回の送受信で何ビットの情報が送れるか、といった定量的な議論も出来ない。そもそも、受信者のイメージはそれだけでは意味をなさない曖昧なもので、4つの選択肢の中からターゲットを選んで評価しないと、なんの判断もできない。ガンツフェルト実験はあくまでガンツフェルト実験に過ぎず、なんらかの情報を伝達する通信手段としては使えない

ガンツフェルト実験に対する批判は主に心理学者によってなされており、物理学者からの批判は少ない。しかし、これは実験の信頼性が高いからではなく、その物理的実体が明らかではないからだろう。この実験手法は単に儀式的なもので、その必然性も説明されていない。

共同コミュニケ

ガンツフェルト実験について特筆すべきは、それまで対立してきた懐疑派のレイ・ハイマン(Ray Hyman、文献5)と肯定派のチャールズ・ホノートン(Charles Honorton、文献6)の間で、1986年に共同コミュニケが発表されたことである。(文献7) この文献ではつぎのように結論されている。

最終的な結論は、幅広い領域の研究者による、より厳格な基準に基づく将来の実験結果を待つことになる、ということで我々は合意した。

この共同コミュニケの最大の成果は、実験手法のガイドラインが示されたことであり、この基準が守られるようになれば、より厳密な実験結果が得られるようになる。とりわけ、有意な結果だけではなく、すべての実験結果について報告するように取り決めたので、これが実行されれば「お蔵入り効果」(引き出し効果、file-drawer effect)の影響を最小限にとどめることができるだろう。(ただし、その他の出版バイアス(publication bias)の効果は残る可能性はある)

しかし、こういう宣言をしたところで、強制力がない規律は、無力な規律である。宣言するだけではダメで、重要なのは、実際に「お蔵入り効果」の影響を最小にするような制度作りである。しかし、超心理学界隈でそういう厳密な制度作りがなされた形跡はない。たとえば、実験開始前にどういう実験をするか宣言し、実行した実験結果を全て報告しなければ、論文として受理しない、等といった制度である。

2000年以前

カール・セーガンCarl Sagan)によると、ガンツフェルト実験(ganzfeld experiment)は、セーガン自身は正しいと思っていないが、真実だという「可能性がある」ので、「まじめに調べてみるだけの価値があると思う超能力の主張」の3つのうちのひとつである。(文献1、ほかの2つはプリンストン変則工学研究所 (PEAR)のミクロPKの実験と「生まれ変わり」であった) ガンツフェルトが、心と心の間の超常的な情報伝達だとすると、そこには物質との直接の相互作用は介在しない。よって、心と物質は全く異質なものであるという観点に立てば、実在する可能性はPK(サイコキネシス)より高いのかもしれない。

新・トンデモ超常現象56の真相」(文献2)によると、2000年11月にオーストラリアのシドニーで開催された第3回『世界懐疑主義者会議』(Third World Skeptics Congress)で、エジンバラ大学ロバート・モリス(Robert L. Morris)教授の研究室のキャロライン・ワット(Caroline Watt)博士がガンツフェルト実験に関するレビューを行い、「ガンツフェルト実験によってサイ現象の実在が証明できたとはいえない」と結論した。よって、この本でも『ガンツフェルト実験は、いまや超心理学陣営から見ても、超能力を肯定する実験だとは言えなくなってしまった』と結論している。

同様にデイビット・マークスの著書「Psychology of the Psychics」でも、2000年までのガンツフェルト実験の経緯がまとめられ、以下のように結論している。

ガンツフェルトの物語は、超心理学の研究でよく知られたパターンに当てはまる。つまり、「興奮するような」発見のあと、欠陥が見つかり、よりよく制御された研究では再現に失敗する。

1999年のジュリー・ミルトン(Julie Milton)とリチャード・ワイズマン(Richard Wiseman)の論文「サイは存在するのか?異常な情報伝達過程の非再現性」(文献4)でも、次のように結論されている。

現時点で、ガンツフェルト法は研究室におけるESPの再現性を提供しない、と著者らは結論する。

デイビット・マークスの評価

デイビット・マークスは、その著書「Psychology of the Psychics」(文献3、2000年版)の中で、共同コミュニケが発表された頃から2000年にかけて行われたガンツフェルト実験を批判的に検証している。そこで、ここではまずマークス氏の評価について述べる。

ホノートンのオートガンツフェルトの実験

1983年からホノートンらは、新しいガンツフェルト実験をプリンストンのPRL(Psychological Research Laboratories)で始めた。この実験はコンピューター制御されていたので、オートガンツフェルトと呼ばれた。受信者はガンツフェルト状態で14分間リラックスした後、受信をはじめ、頭に浮かぶことを30分間にわたって声に出して語る。そのあいだ、送信者はランダムに選ばれた音声付の静止画やビデオを送信しようとする。セッション終了後に受信者はターゲットを含む4つの画像を見せられ、どれが正解か40点満点で評価する。

この実験では6年半の歳月をかけて、17歳から74歳の240人の受信者が354回のセッションを行った。この実験では破棄された結果はなく、共同コミュニケのガイドラインを満たしていた。ただし、このうち25回の実験は条件が異なっていたので、別に解析された。残り329回の実験のうち、106回がヒットし、成功率は32パーセント、エフェクトサイズは0.59、z値は2.89と有意な結果が得られた。(文献8)

ついにガンツフェルト実験は超能力実在の証拠をもたらしたのであろうか?

ハイマンによる批判

ところが、この実験はハイマンから批判を受けてしまう。(文献12) ハイマンは実験結果に人為的なエラーと考えられる特異的なパターンを見つけ、ターゲット選択のランダム化に不備があったと指摘した。ターゲットの登場回数と正解率の間に強い相関があったのである。1回しか登場しないターゲットの正解率は偶然から予想される結果(25%)と一致したが、8回登場するターゲットの正解率はその3倍の75%に達していた。

さらにハイマンは、立ち会いの実験者がターゲットの選択を受信者に促していることも問題視している。受信終了後、実験者は受信者が発言したイメージの内容をいちいち思い起こさせ、詳しく述べるよう励ましてからターゲットを選択させた。こうした方法だと、受信者の選択になんらかのバイアスが入ってしまう可能性がある。事実、同じターゲットが2度以上使われた際に、実験者による促しが行われると、正解率が上がることをハイマンは指摘している。

もちろんホノートンはこの批判に対して反論したが、結論はその後の実験に先送りすることに同意した。

ワイズマンらの批判

ところが、さらにワイズマンらにも批判されてしまう。(文献13) メタ超心理学研究室の「3-2 ガンツフェルト実験」にも書かれてあるとおり、この実験では、受信者がイメージを声に出して発言し、それをテープに録音する。この時、送信者にもこの発言がモニタされ、ターゲットに近いイメージが報告されたら、送信者は「あっ、おしい!」などと心の中で叫ぶ。

この際、部屋が遮音室ならば実際に叫んでもよいことになっていたが、受信者にはそれが聞こえないよう細心の注意がはらわれた。ところが、これが受信者に立ち会っている実験者には聞こえていたのではないか?というのがワイズマンの批判である。ハイマンの指摘のように実験者は受信者にターゲットの選択を促していたわけで、実験者がターゲットを知っていれば、当然それはバイアスとなってしまう。受信者がターゲットを選ぶ模様も送信者はモニタしていたようで、この際にも声を上げていた可能性がある。354回の実験のうち、実験者による促しが行われていたのはほぼ半数の165回であった。 

実際に送信者が何を叫んだか記録は残っておらず、ある時点で声を出さないルールに実験は変更されたが、これがいつの時期だかはっきりしない。実験者は送信者から約4メートル離れたところに座っていた。防音壁には厚さ10センチのSonexタイルが使われた。このタイルは音を吸収するように作られていたが完璧な遮断はできず、アメリカで標準的な内部壁と同様のものだった。扉とその枠からも音は漏れた可能性がある。

さらに、1999年に発表されたミルトンとワイズマンの論文(文献4)によると、メタ解析の結果、ガンツフェルト実験にはなんら有意性はなかった。特に1997年から1999年3月までの39の新しい実験について調べてみたところ、このうちKathy Daltonによる非常に有意な結果(文献14)を取り除くと、有意性が消えてしまった。逆にこの結果は、Daltonの実験方法に何も問題はなかったのか検討する必要があることを示している。

このように、共同コミュニケ以降の25年近い研究でも、ガンツフェルト実験は超能力の存在を示すことに成功していない。

マークスの結論

以上のハイマンとワイズマンの批判を受けて、マークスの結論も「ホノートンのガンツフェルト実験に関する論文はそもそも発表されるべきではなかった」と手厳しい。マークスの批判の対象は論文の著者であるホノートンらだけではなく、この論文が発表されたPsychological Bulletinの編集者にも向けられている。

2000年以降の研究

2012年に以下の本が出版された。この本の書評については「書評:「超心理学 封印された超常現象の科学」」を参照。

この本の第1章は「ガンツフェルト実験」について書かれてある。

ラディンの図

43ページの図1.1には、1974年から2004年までの3145回の実験について、その累積成功率が示してある。ガンツフェルト実験のターゲットは4つの画像なので、偶然で当たる確率は25%であるが、図1.1の最終的な累積成功率は、なんと32%である。

これが事実であるならば、驚くべき成功率であるが、この数字をそのまま信じる必要はないだろう。この図は、超心理学者ディーン・ラディンの著書「量子の宇宙でからみあう心たち」(175ページ)からの引用である。

原著の「Entangled Minds」で確認すると、どうもこの図は、ラディン氏がこの本のために制作したものであり、査読のある学術誌で発表されたものではないようである。(つまり、専門家の検証を受けていないようだ)

図1.1を見ると、1994年から2004年までの累積成功率は、約32%でほとんど変化していないが、毎年ごとの実験回数が示されていないので、この間、何回実験が行われたかわからない。

1986年から1994年にかけて、成功率は若干減少しているように見えるので、累積成功率が高い原因は1986年以前に行われた実験が原因かもしれない。しかし、毎年ごとの実験回数が示されていないので、これも詳しいことはわからない。

懐疑派のレイ・ハイマン(Ray Hyman)と肯定派のチャールズ・ホノートン(Charles Honorton)の間で共同コミュニケが発表され、有意な結果だけではなく、すべての実験結果について報告するよう取り決めたのは、1986年のことである。

だとすると、1986年以前の実験結果は統計から除外するべきである。ラディンは共同コミュニケを無視しているようなので、この統計は信ぴょう性に乏しい。せっかく共同コミュニケのようなものを発表しても、それを無視するのであれば、厳密な実験は不可能である。また、ガンツフェルト実験に有意性を見い出すことのできなかったミルトンとワイズマンのメタ解析が出版されたのは1999年のことであり、ラディンの図は、このメタ解析の結果とも矛盾している。

ラディンも前半の実験の正答率が34.4%であるのに対し、後半の実験の正答率が30.3%に減少しているのは認めている。

しかし、その原因は「実験が改善されたため」ではなく、最初は「証明指向で、もっとも超心理学の効果が出そうな、シンプルでエキサイティングな実験」であったためであり、その後は「実験の目的がプロセス指向に変わっていき、複雑で意欲の湧きにくい実験、ときには意図的に超心理が起きにくい実験を行う」ようになったからだと解釈している。

つまり、どういうわけか、ラディンは「実験の厳密化」による成功率の低下を認めていない

また、ラディンは「お蔵入り問題」の存在も否定している
お蔵入りとは、異常のある興味深い結果ばかり論文として発表され、つまらない普通の結果は発表されないことによって生じる「出版バイアス」のことである。ガンツフェルト実験の場合も、実験が成功した場合のみ論文として報告され、成功しなかった場合は報告されない傾向があるだろうと予測される。

しかし、ラディンによると、ガンツフェルトの成功率を無効化するには、7万2千回の実験試行数が必要になるとして、お蔵入り効果をまるっきり無視しているようである。たとえ無効化できなくても成功率は下がるはずであるが、この点をラディン氏は無視しようとしているように見受けられる。

ラディンは、実験の厳密化とお蔵入り効果による成功率の低下はないとして、ハイマンとホノートンの共同コミュニケの効果を無視しているように読める。

しかし、実験の厳密化による有意性の低下や、お蔵入り効果等の出版バイアスは、どんな科学実験にも付きまとう問題である。こうしたバイアスを差し引いたのが実際の有意性であり、ガンツフェルト実験の場合も例外ではない。

たとえば、以下の記事のように、心理学の研究結果のうち、6割以上が再現不可能だという検証結果が報告されている。

 科学者270人からなる研究チームは、2008年に米国の主要査読学術誌3誌に発表された心理学と社会科学の研究論文100件について、その結果の再現を試みた。

 

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された調査結果によると、元の研究論文と同じ結果が得られたのは、全体の39%にすぎなかったという。

しかし、研究発表にバイアスはつきものなので、これはとくに驚くべき結果でもない。

科学研究論文には、新規性が求められる。よって、再現性のない特異な現象が報告されがちになる。最初に論文として発表されるのは、仮説である場合が多く、その後の研究で再現性がなくても、ウソでなければ、それほど問題視されないのである。(だからといって、デタラメを発表してもいいというわけではない)

どんな科学分野においてもバイアスが存在し、超心理学も例外ではない。ラディンがバイアスの存在を否定していることはきわめて不自然である。むしろ、超心理学は、統計的にごく微量の有意性を取り扱う分野なので、バイアスの問題を無視できないはずである。そもそも、統計学は限られたサンプルから全体のだいたいの傾向を予想する学問なので、非常に弱い効果を検出するのに向いた研究方法であるとは限らない。バイアスの効果を排除できない従来の研究発表方法では、たしかな検証結果は得られないだろう。研究計画を事前に登録し、その成果を必ず報告する等、バイアスをできるだけ排除する努力が求められる。共同コミュニケを無視するような態度は論外である。

ベムとワイズマンの論争

石川氏の本によると、共同コミュニケ以降のガンツフェルト実験の統計でも有意性が消えると、ワイズマンらが1999年の論文で報告している。これはラディンの主張と真っ向から対立している。

これに対し、ベムらが2001年の論文で、『実験手順に新しい変更を加えたガンツフェルト実験にのみ、有意でない傾向があることを見出した』と反論している。

しかし、なぜ古い方式のガンツフェルト実験のみ有意性が出るのか、合理的な説明がない。ワイズマンら批判派は、これを「後付けの理由」によるデータの取捨選択とみなしている。つまり、実験後に結果を見て、都合の悪いデータのみ切り捨てているのではないか?と疑われているのだ。 本来ならば、実験に不備のあるものを切り捨て、厳密な実験のみについて統計をとるべきなのだが、「手順に新しい変更を加えた実験」のみを切り捨てているのであれば、それはあまり理にかなった行為ではない。

このように都合の悪いデータに適当な理由をつけて無効化する態度は超心理学のあちこちで見かけることができる。超心理学者のこうした態度をワイズマンは「表が出たら俺の勝ち、裏だったらあんたの負け」と揶揄している。

たとえば、石川氏の本でも「透視」について以下のような記述がある(227ページ)。

誤って別のターゲットを透視してしまうことを「転移効果」と言い、空間的に別のターゲットを当てる現象を「空間的転移」、時間的に別のターゲットを当てる現象を「時間的転移」と呼ぶ。これまで多くの事例が報告されているが…

こんなルールを適用すれば、都合の悪いデータをいくらでも無効化することができる。このように、超心理学界は、ふつう科学界では適用されないような独自ルールを適用するので、これが本流科学から疎まれる大きな原因となっている。

2010年以降

2010年:ストームとハイマンの論争

なお、2010年にはストームとハイマンらのあいだで論戦が展開されている。

2011年

さらに、2011年には以下の論文が発表されている。

  • 「Revisiting the Ganzfeld ESP Debate: A Basic Review and Assessment」 BRYAN J. WILLIAMS、JOURNAL OF SCIENTIFIC EXPLORATION, Volume 25, Number 4(pdf), 639-662, 2011

この論文では、1986年の共同コミュニケ以降の59の研究から、約30%の合計成功率が得られたとしている。

この論文が掲載されたJournal of Scientific Explorationは、いわゆるフリンジサイエンス(本流科学からは疎まれているような異端の科学)の専門誌であり、超心理学系の論文がよく掲載される。ディーン・ラディンも共同編集者(Associate editor)のリストに名前を連ねており、ラディンの「水伝」に関する論文のうち1報もこの雑誌に掲載された。

2013年

1970年代から始まったガンツフェルト実験にまつわる論争は、2010年を過ぎても終わっていない。いまだに、あるかないかの論争が続いているのである。以下は2013年の論文。

これは、2010年のストームらの論文を、ベイズ統計的手法を使って再検討したもの。ストームらの研究結果は、およそ60億対1で超能力の存在を示唆しており、これは懐疑論者でも無視できない結果だった。

しかし、この効果のほとんどは実験のランダム化の困難さに由来する可能性がある。そこで、手動によるランダム化を除外し、コンピュータによってランダム化された実験に解析を限ると、ベイズ因子は多くても330:1と極端に減少する

ガンツフェルト実験には、もっともらしいメカニズムは存在せず、未報告の再現失敗例は当然存在すると考えられるので、超能力の存在の証明にはならないという結論。

ガンツフェルトの実験手順はとても煩雑なので、バイアスが入り込む余地がいくらでもある。原因の特定が難しくなるような実験デザインでは結局ダメだということ。

ガンツフェルト実験の結果はバラツキがとても激しいため、結果をどう選択するかによって結論が変わってくる。そもそもテレパシーが情報伝達だというのなら、どのくらいの情報量がどのくらい正確に伝わっているか調査しなくては意味がない。ガンツフェルト実験では、実験自体がバイアスになっている。現象が実在するのであれば、その原因を追及できるようなシンプルな実験でないと意味がない。ガンツフェルト実験は、「なにが原因で有意性が出るのか究明する」ためにはできておらず、できる限り「有意性が残る」ようにデザインされた実験なのである。


参考文献

  1. カール・セーガン 科学と悪霊を語る」 カール セーガン (著), 青木 薫 (翻訳)  新潮社 (1997/09)
  2. 新・トンデモ超常現象56の真相」 皆神 龍太郎 (著), 加門 正一 (著), 志水 一夫 (著), 山本 弘 (著) 、太田出版
  3. Psychology of the Psychics」 by David F. Marks (Author), Richard Kammann (Author) Prometheus Books
  4. Does psi exist? Lack of replication of an anomalous process of information transfer」 Milton, J. & Wiseman, R. Psychological Bulletin, 125(4), 387-391 (1999).
  5. The ganzfeld psi experiment: A critical appraisal」 Hyman, Ray, Journal of Parapsychology. 1985 Mar Vol 49(1) 3-49
  6. Meta-analysis of psi ganzfeld research: A response to Hyman」 Honorton, Charles, Journal of Parapsychology. 1985 Mar Vol 49(1) 51-91
  7. 「A joint communique: The psi ganzfeld controversy」 R. Hyman, C. Honorton, Journal of Parapsychology 1986, issue 50 350-64
  8. Does Psi Exist ? Replicable Evidence for an Anomalous Process of Information Transfer」 Daryl J. Bem and Charles Honorton, Psychological Bulletin 1994, Vol. 115, No. 1, 4-18.
  9. ganzfeld」:Skeptic's Dictionary
  10. Ganzfeld experiment」:Wikipedia
  11. Richard Wiseman」:Wikipedia
  12. Anomaly or Artifact? Comments on Bem and Honorton」 Ray Hyman, Psychological Bulletin, 1994, Vol. 115, No. 1, 19-24
  13. Exploring possible sender-to-experimenter acoustic leakage in the PRL autoganzfeld experiments」 by Richard Wiseman, Matthew Smith, Diana Kornbrot, Journal of Parapsychology, 60, 97-128, 1996
  14. Is there a formula to success in the ganzfeld? Observations on predictors of psi-ganzfeld performance」 Dalton, Kathy, European Journal of Parapsychology, 13, pp. 71-82, (1997)
  15. Updating the Ganzfeld Database: A Victim of Its Own Success?」(pdf) Daryl J. Bem, John Palmer, Richard S. Broughton, The Journal of Parapsychology Vol, 65, September 2001