ピラミッド:進化編
ピラミッドは建築技術が進化してきた形跡をもたないで、突然高度な技術が登場したかのように作られている。という話が出ることがある。この話を出してから「だから外部の何者かに技術を譲り受けたのだ!」と続けると、超古代文明や異星人説に繋がるので良く使われる話らしい。
これは正しいのだろうか?
もちろん正しくない。ピラミッドの進化はかなり急激であったことは間違いないが、ピラミッドには思考錯誤や進化の形跡が見られる。
マスタバ
まず、エジプトの注目すべき建造物であり、ピラミッドの最初の形態として現れたのが“マスタバ”である。これは、日干レンガを積み上げて王墓を天に近づける形として作り始められたもの。マスタバはその後、二段、三段の土台の上に作られるようになり、多段式のマスタバとなった。
永続的に残るように日干レンガの代わりにキメの細かい石灰岩を使うようにもなった[1]。
階段ピラミッド
紀元前2700年頃、イムヘテプによって多段式マスタバとも階段ピラミッドとも呼べるような石灰岩の構造物が作られた。
初期真性ピラミッドの試行錯誤
それから50年程すると、スネフェル王が8段の階段ピラミッド(スネフェルの父フニが計画したものと言われる)を作成し始めたが、他の計画も持ち上がり側面のなだらかな真性ピラミッドを作成する計画となった。
階段状のピラミッドは計画半ばで一度放置され、真性ピラミッドの建設がはじまった。
この最初に計画された真性ピラミッドは傾斜角60度であったが、建設半ば、石の重みで中央部が落ち込みはじめた。つまり自重で崩壊しはじめたということである。
崩壊を防ぐために、傾斜角60度から傾斜角43度に変更して作られたのが、今日まで残っている屈折ピラミッドである[2]。
真性ピラミッド
スネフェル王は、計画変更したピラミッドに満足しなかったのか、屈折ピラミッドの経験を生かして“赤ピラミッド”と呼ばれる真性ピラミッドを完成させた。
その後、最初に計画されていた階段ピラミッドを真性ピラミッドとして改築し完成させたと考えられている。このピラミッドは崩れピラミッドとして崩壊した姿で知られている。
3大ピラミッド
スネフェルの子であるクフは、先代の経験を生かして傾斜角51度の最も大きな真性ピラミッドを作成した。
ピラミッド技術の衰退
その後、代を重ねるとエジプトの王の権威が落ち、さらには環境の悪化などもあって、ピラミッドが作られない時期が数百年続いた。
そのため「経験」という実際的な知識は大きく失われたと考えられている。
このように、ピラミッドには進化と衰退の歴史が確かにある。