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2010/8/5朝日新聞の記事とホメオパシー団体の反応

ホメオパシー


 「ホメオパシー」と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。自然なお産ブームと呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠ははっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。

 

 新生児はビタミンK2が欠乏すると頭蓋(ずがい)内出血を起こす危険があり、生後1カ月までの間に3回、ビタミンK2シロップを与えるのが一般的だ。これに対し、ホメオパシーを取り入れている助産師の一部は、自然治癒力を高めるとして、シロップの代わりに、レメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。

 

 約8500人の助産師が加入する日本助産師会の地方支部では、東京、神奈川、大阪、兵庫、和歌山、広島など各地で、この療法を好意的に取り上げる講演会を企画。2008年の日本助産学会学術集会のランチョンセミナーでも、推進団体の日本ホメオパシー医学協会の会長が講演をした。同協会のホームページでは、提携先として11の助産院が紹介されている。

 

 日本助産師会は「問題がないか、実態を把握する必要がある」として、47支部を対象に、会員のホメオパシー実施状況やビタミンK2使用の有無をアンケートして、8月中に結果をまとめるという。

 

 また、通常の医療の否定につながらないよう、年内にも「助産師業務ガイドライン」を改定し、ビタミンK2の投与と予防接種の必要性について記載する考えだ。日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。

 

 助産師会の岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しないが、ビタミンK2の使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」と話している。

 

 助産師は全国に約2万8千人。医療の介入を嫌う「自然なお産ブーム」もあり、年々増えている。主に助産師が立ち会うお産は、年間約4万5千件に上る。

 

 テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。

 

 取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを選んだという。

 

 一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。

 

 ホメオパシーをめぐっては英国の議会下院委員会が2月、「国民保健サービスの適用をやめるべきだ。根拠無しに効能を表示することも認めるべきではない」などとする勧告をまとめた。薬が効いていなくても心理的な効果で改善する「偽薬効果」以上の効能がある証拠がないからという。一方、同国政府は7月、科学的根拠の乏しさは認めつつ、地域医療では需要があることなどをあげて、この勧告を退ける方針を示している。

 

 日本では、長妻昭厚生労働相が1月の参院予算委で、代替医療について、自然療法、ハーブ療法などとともにホメオパシーにもふれ、「効果も含めた研究に取り組んでいきたい」と述べ、厚労省がプロジェクトチームを立ち上げている。(福井悠介、岡崎明子)

 

 ◇

 

 〈ホメオパシー〉 約200年前にドイツで生まれた療法。「症状を起こす毒」として昆虫や植物、鉱物などを溶かして水で薄め、激しく振る作業を繰り返したものを、砂糖玉にしみこませて飲む。この玉を「レメディー」と呼んでいる。100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない。推進団体は、この砂糖玉を飲めば、有効成分の「記憶」が症状を引き出し、自然治癒力を高めると説明している。がんやうつ病、アトピー性皮膚炎などに効くとうたう団体もある。一方で、科学的な根拠を否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせたとして親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが報道されている。

上記の朝日新聞の記事によると、ビタミンK不投与事件の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であったことを受け、社団法人「日本助産師会」がホメオパシーの実態調査に乗り出した。

日本助産師会は、日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。ただし、岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しない」とも話しており、危機意識が低いことがわかる。

また、NHKの番組に登場したこともある「カリスマ助産師」神谷整子氏が、自身も効き目のないK2レメディーを与えていたことを認めている

ところが、神谷氏も「K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と、まるで他人事のようだ。神谷氏が登場したNHKの番組については以下のリンクを参照。

ブログ「鼬、キーボードを叩く」の以下のエントリで、平成18〜20年のあいだに、助産師会で開催されたホメオパシーの講演会や研修会について見ることができる。

日本ホメオパシー医学協会の反応

ホメオパシージャパン(株)からリンクされている日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)のページ「朝日新聞等のマスコミによるホメオパシー一連の報道について その1」を参照。いくつか注目すべき点を引用しておく。

助産師の所属する団体

新聞報道では助産師は、どのホメオパシー団体に所属しているか、明らかでなかったのに対し、ここでは以下のようにJPHMA会員であることを認めてしまっている。

この山口地裁の訴訟については、昨日(8/4)、第1回の口頭弁論があり、JPHMA会員の助産師側は、損害賠償請求の棄却を求めています。

さらに、以下のようにも述べている。

ホメオパシーは200年前から世界的に膨大な治療実績がある治療法であり、日本ホメオパシー医学協会が認定するホメオパスは、プロの基準を満たしているので、ホメオパシー治療を職業とするのに何の問題ないというわけです。

それならば、なぜ「プロの基準を満たしている」はずのJPHMA会員が今回のような事件を起こしてしまったのだろう?裁判で経緯が解明されることを期待する。

ビタミンK不投与事件について

また、本件に関連したマスコミ報道の中で、あたかも乳児死亡がホメオパシーに原因があるかのあるかのような印象を与える記事を見かけますが、そもそもホメオパシーレメディーをとって死亡することはありえません。

と、あくまで「レメディは死亡原因ではない」という主張のようだ。しかし、今回の事件では、本来飲ますべきビタミンK2シロップを飲ませず、効果のないレメディを代わりに飲ませたのが直接の原因なのは明白である。

ワクチンについて

JPHMAは、法律的に義務化されていない限り、国民1人1人がワクチンやクスリの害と効用をしっかりと知り、選択すべきものであると認識しています。当然、ワクチンを打つなとか、薬を飲むななど主張する立場でもなく、そのような主張を行っているという事実も全くありません。国民1人1人が判断する材料として、ホメオパシーの考え方や臨床経験から情報提供しているのみです。

しかし、JPHMAの由井寅子会長は自著「予防接種トンデモ論」(ホメオパシー出版、2008年)の序章で以下のように語っている。

予防接種によって多くの子どもたちが苦しみ、人々の免疫が低下し続けている。もう手の施しようがなくなってしまう前に、事実を見てきた私たちホメオパスが、その事実を話さなければならない。ホメオパスは、予防接種による医原病を治癒へと導く術をもち、予防接種に代わる予防の術をもち、感染症にかかった場合でも治癒へと導く術をもち、さらに、予防接種がいかに悪影響を及ぼすものであるかを証明できる臨床経験ももっているではないか。私たちホメオパスが予防接種に反対しないで誰がやるのだろうか、率先してやらなければならない

太字はSkeptic's Wikiによる。また、JPHMAのサイトには「1918年のスペイン風邪の伝染は予防接種が原因だった!」などというページもあり、「スペイン風邪に対する予防接種が、大流行と死亡率を高めたことを窺わせる証言をもとに書かれた本がありますので、紹介することにします」などとしている。その一部を引用しておく。

その流行病は、当時の医師たちが、症状を抑圧しようとしてさらに投与した有毒な薬物によって勢いが保たれ、2年間にわたって続きました。私が知り得た限りでは、予防接種を受けたことのある人しかそのスペイン風邪に罹らなかった。予防接種を拒んだ人たちは罹らなかった。私の家族はすべての予防接種を拒んだため、その流行病の間ずっと元気だった。私たちはグラハム、トレール、ティルデンらの健康についての教えから、体内を毒物で汚染することが必ずや病気につながっていくことを知っていたのだ。

菊池誠教授のコメントについて

大阪大学サイバーメディアセンター菊池誠教授のコメントについては、

大阪大の菊池氏の発言として掲載されていますが、もしこれが事実としたら、研究もせずに、自分の持つ価値観、自分が学んだ範囲でのみ考えて結論を出し、頭から否定するというのは、科学者として頭が固すぎるといわざるを得ません。過去の歴史からも、未知のものを既知としていくところにこれまでの発見があり、発展があるということを学ぶことができるのに、そのことさえも認識されていません。

とのことで、どういうわけか「科学的な根拠に関して」として、以下の「体験談」にリンクされている。

菊池教授の反論としては、kikulogの以下のエントリを参照。一部を引用しておく。

水と砂糖は水と砂糖ですから、水と砂糖としての効果しか持ちません。特に実験だの研究だのをする必要はありません。あまりにもナンセンスな話はいちいち反証だの実験だのをせずに否定してかまわないし、そうするべきですよ。

レメディは食品である

ホメオパシーのレメディーは、薬ではなく食品となっており、レメディーを与えることは医療行為に当たりません。レメディーがあたかも薬であるかのような表現をすることは、事実誤認であり、多くの人に誤解を与える表現です。

ホメオパシーのレメディは、薬ではなく食品だそうな。食品を扱っているのであれば、「医学協会」ではなく「日本ホメオパシー食品協会」とでも名乗ったほうが誤解が少なくてすむのではないか?レメディは砂糖玉なので、「日本ホメオパシー製菓」というのもいいかもしれない。

川嶋朗准教授とは誰か?

JPHMAの反論記事には「川嶋」氏という名前が10回程度登場する。これは東京女子医科大学付属青山自然医療研究クリニックの川嶋朗准教授のことである。asahi.comにはないが、新聞記事には以下のような川嶋准教授の発言が掲載されていたようだ。

  1. 「ワクチンを打つなとか、薬を飲むななどと主張する過激なホメオパシーグループも存在する。」
  2. 「レメディーを投与するのは医療行為である。」
  3. 「薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。」

JPHMAはこうした川嶋准教授の主張に真っ向から反論しているが、川嶋准教授もホメオパシーを治療に取り入れている人物であり、日本ホメオパシー医学会理事、日本波動医学協会会長、I.H.M.国際波動友の会インストラクター、気の医学会世話人等の肩書をもっている。同じホメオパス同士なら仲もいいのかと思えば、そうでもないようだ。レメディを「食品」とみなし、一般人にホメオパスとしての認定を行ったり、レメディを販売しているJPHMAやホメオパシージャパン(株)は、どうやら川嶋准教授の「レメディを投与するのは医療行為」という主張がお気に召さないようだ。

以下の記事で川嶋准教授の発言を読むことができる。

その他

この件については、以下のブログのエントリも参照。

日本ホメオパシー振興会の反応

今回の事件が、あたかも「ホメオパシーそのもの」によって起こったことのように報じられています。前回の見解でも述べましたように、VK2シロップの代替として「ホメオパシーレメディーVK2」なるものを投与すること自体、「本来のホメオパシー」ではありません。日本ホメオパシー振興会が普及しております「本来のホメオパシー」においては、そのような無意味かつ危険な行為はありえないことです。

以上のように、日本ホメオパシー振興会の立場は今回の事件は「本来のホメオパシー」が起こしたのではないといったものだ。さらに、

当該助産師が所属する「ホメオパシー普及団体」の行っていることが、あたかも通常のホメオパシーであるかのような記事内容ですが、その団体は、日本国内でホメオパシーを標榜する1団体にすぎません。しかもその団体が行っていることは、上述のように、「本来のホメオパシー」とはかけ離れており、「ホメオパシーレメディーを使うけれど『本来のホメパシー』ではないまったく別の極めて特殊な療法」です。

と述べて、当該助産師が所属する「ホメオパシー普及団体」を真っ向から批判している。日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)はHPで、当該助産師がJPHMA会員であることを認めているので、この場合、批判されているのはJPHMAということになる。

実際にはホメオパシーは高度な科学性と芸術性を併せ持っている医療です。ホメオパシーの科学性を正しく論じるためには、「狭義の科学的手法」だけではなく、科学の本質とパラダイムシフトの歴史、統計学の本質、二重盲検法の本質、そして人間の本質についての深い教養と、謙虚で真摯な科学的態度が必要です。日本ホメオパシー振興会では今後もひき続き、ホメオパシーの科学性に迫る研究を支援し、邁進してまいります。

とのことなので、ホメオパシーは科学という立場のようだ。(この場合、芸術性がどう関係してくるのかよくわからないが…) しかし、ホメオパシーを科学だとするには相当な無理がある。なぜなら、ホメオパシーとは、おおざっぱに言って、

  1. ホメオパシーの原理は「似たものが似たものを治す」という根拠薄弱なものなので、謳われるような薬効が本当にその原料にあるかどうかも疑わしい。
  2. もともとの原料成分が1分子も残らないほど、水で希釈する。
  3. レメディとして用いられるのは、その希釈溶液をかけた砂糖玉であり、患者に処方されるときには、その水分はほぼ蒸発している。

といったものだからだ。これは科学というよりは、どちらかというとオカルトに近い。

ところが、琉球大学理学部大瀧丈二(松本丈二)准教授という人物がホメオパシー肯定派の科学者として、日本ホメオパシー振興会代表の永松昌泰氏と対談したようである。今後、大瀧准教授がホメオパシーについて、どのような研究成果を(査読制のある国際学術誌に)発表していくか注目していきたい。

大瀧氏については、以下のリンクも参照。

J-CASTニュースの記事

上記のような記事がJ-CASTニュースにされたが、「医師免許がなくても治療できるというのは、本当のことなのか」のように、ちょっと論点がずれてしまっている。これに対し、さっそく日本ホメオパシー医学協会が反論している。